全体に寄与する気持ちが必要

 IT業界のエンジニアは自分に課せられた仕事に注目して、専門的な立場から開発を行っていれば何ら問題はなかった。自分が得意とする領域を作り上げ、他のエンジニアにはできない程度にまで掘り下げられるようになると一人前となり、現場での重要な役割を果たせていたのである。

 しかし、スクラム開発を行っている現場では、そのようなエンジニアでは必要な役割は果たせない。IT業界のエンジニアがそのような現場で活躍するためには、視点を自分から全体に移すことが必須となる。自分の業務をこなせるのは最低条件であり、それに注目してしまうのではなく、全体に視点を置いてその一部として自分の仕事を見なければならない。

 役割として必要になるのは全体に貢献することである。たとえ自分の業務だけを進めていたとしても、プロジェクトは効率的に進行していかないだろう。メンバーの業務が滞っているならそこに積極的に協力していき、全体としてプロジェクトを進めていくのに寄与する視点が欠かせない。この視点が充実すると全体を見渡しながらマネジメントができる人材として認められ、スクラムマスターとなることも可能である。

 スクラムマスターには仕事の滞りが起こらないように仕事を割り振る能力が求められるため、個人の仕事に目を向けつつ全体を効率化する視点が重要になる。従来はなかった全体を見る目を養い、たとえ自分の業務が遅れたとしてもプロジェクトを進行させる役割を果たす必要があるのがスクラム開発である。